愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

忘れない男

今週のお題「忘れたいこと」

 

全てを記憶する脳を持つ男がいました。

今まで目にしたこと、耳にしたこと、経験や伝聞の全てを、正確に思い出すことが出来ました。

こんな能力があると、羨ましい、と思う人は居るかも知れません。

試験問題を解く時にいつでも満点を取れそうだとか。

しかし、そうでは有りませんでした。

本能寺の変で暗殺された武将は?

そう聞かれたときに、普通は織田信長と答えて終わりです。

彼の場合はそれだけではありません。

本能寺、織田信長、謀反、明智光秀などに関するあらゆる情報が頭に浮かびます。

羽柴秀吉お市の方織田信雄比叡山延暦寺

蓮如親鸞日蓮武田信玄浅井長政前田利家、奥村助右衛門、末森城。

こうして羅列したものだけでも多いのですが、これはごく一部です。

さらに困ったことに、彼はAIではなく人間です。

そのため、これらの情報に対して一定の感情や感想があるのです。

本能寺の変については信長の驚愕や諦めや潔さに対して、憐憫や哀惜の念を感じます。

伊勢長島のジェノサイドに対しては嫌悪感や強い悲嘆を。

日蓮の激しくも一途な生涯に感動し、安土城の壮大な景観に感嘆します。

これらがほとんど同時に頭に浮かぶのです。

そんな訳で、全く問題を解きすすめることが、スムーズには出来ませんでした。

これは日常生活でも同じです。

朝起きて着替えるのも、冷蔵庫から飲み物を取り出すのも、何もかもあらゆる記憶が奔流となって彼をほとんど襲うといってよいくらいに溢れ出ました。

それは誰かと対話するときも同様です。

彼にとって他人と関わるのは、常に恐怖と苦痛を伴う作業でした。

何もかも忘れて眠りたいといつも思って眠りにつくのですが、様々なことが頭をよぎり、いつもなかなか寝付けませんでした。

彼の夢は『全てを忘れること』でした。

『チワワの飼い方・しつけ方』

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動物の飼い方や躾け方の本は、色々あります。

しかし、犬種まで絞った本は、そこまで多くはないようです。

本書は世界最小の犬種である、チワワ、に焦点を当てて解説しています。

人懐っこいけど、時として攻撃的な性格。

頭や目が大きくて可愛らしいなど、特徴的なチワワをしっかり捉えています。

『家族喰い』

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角田美代子。

いくつもの家族に食い込み、それらの財産を喰いつくす。

それだけに留まらず、家族間の絆を断ち切り、その人員さえも喰らう。

実に背筋の寒くなる大量の殺人事件を次々に起こした、主犯である。

 

自身が恵まれない家庭に育ち、その影響からか、他の家族を離反させることに執念を燃やした様子が伺い知れる。

また、自らは強固な家族を作り、慕われたかったのだろう。

 

獄中で自死をした犯人は、どのような思いでいたのか?

とても興味深い事件である。

『ズルさのすすめ』佐藤優

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ずるい、悪賢い、クレバー。

正攻法では無いけれど、上手くやる方法があります。

場合によってそういった物をうまく使えると、生きやすいし得をしやすいかも知れません。

 

ロシア語のヒートリー

腹の中を見せない、悪賢い

すばしこい、創意工夫に富んだ

 

聖書の神は因果応報を否定している

 

共通善:

皆が幸せに生きるためによいもの

困っている人への手助け

子どもに教育を受けさせる

社会のために何かをする

 

直感力:

実は理屈よりも信頼できる

相手や対象にしっかり向き合うことで成長する

 

必要な時間は先に天引きするとよい

積み立て貯金と同じ考え方

 

人は何かに酔って生きている

宗教、異性、酒など

 

相手の嫌がる話題や人物は出来るだけ把握する

 

教養の本質は二つ

「中道」

「やわらかい思考」

 

相手の時間を大切にする、特に終わり時間

 

法治国家では、神の位置に法が存在する

 

人でも思想でも、わかるまで信じるな。

理解するのは遅くても良い。

 

視点を変えると、本業で役立つ資格がある

 

自由や平等は今の現実では実現困難

 

ある程度の強かさがあれば、精神的に辛くなりにくいはずです。

そうすると、他者にも寛容になれます。

 

 

『火の鳥 10』手塚治虫

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その鳥の血を体内に入れると永遠の命を手に入れられるという、火の鳥

永遠の命や生まれ変わりがテーマになっている、名作のマンガです。

 

朝鮮にあった昔の国の王子が主人公です。

戦いに敗れて、日本に落ち延びて来ます。

そこでは日本古来の神々と、新しく入ってきた仏教の化身とが、激しく争っていました。

 

未来の世界では、ある教団が現存する人間を神に見立てさせて、その他の者を激しく弾圧していました。

 

二つの世界が絡まり合いながら、ストーリーは進行していきます。

『不思議の国のトムキンス』G.ガモフ

相対性理論をわかりやすく実際の現象として目に見えるようにしたら、というコンセプトの著書です。

他者は早いスピードで動くと、その方向に平べったくなる

 

自分が早く動くと、周りが短くなる

 

自分が早く動くと、時計の動きが遅くなる

自分の加齢が遅くなる

止まっている人と時間の動きがずれる

 

宇宙は急激に膨張している

 

量子は小数点以下27 個のゼロがつく小ささ

 

量子閉じ込めると、とても速く動く

そしていずれしみ出す

そのためにはものすごい長い時間が必要

 

どれも現実に起きているけど、我々が感知出来ていない事柄です。
そのため知らないしわからない。
でも、現実なのですよね。
いやー、世の中って、面白いですよね。

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治

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ジョバンニとカムパネルラ。

小さい頃に読んだ本書の残っている記憶は、登場人物の名前くらいでした。

 

主人公は小学校の授業で、天の川について学習します。

ちょうどその頃、その地域では星にまつわるお祭りがあります。

意地悪な同級生がいたり、父親が遠くに行っていたりと、現実はなかなか容易ではありません。

そんな時に不意に、主人公は銀河鉄道で宇宙を旅することになります。

 

宇宙の風景の描写が、非常に綺麗です。

また、ジョバンニとカムパネルラの心の動きや、良いことや幸せについての対話。

 

戻ってきたジョバンニのいる現実は、辛いものかも知れませんが、それまでとはきっと違った物になっているように感じられます。

童話は時として、大人の方が多くを得られる場合があるようです。