2005年出版、著者の村上龍が自身で「最高の短編を書いた」という「空港にて」の他、全8編が収録された短編集。
「コンビニにて」
主人公のぼくは、サンディエゴの映画技術学校に行くと決めて、自分ですべて手続きを終えた。
そのぼくがコンビニに入って、そこにいる人物をそれぞれ描写していく。
大学を中退して、スナックでバーテンとして働き始めた兄との会話などを通じて、ぼくの未来を想像させられる。
「居酒屋にて」
わたしは、自身の彼とその会社の人と、わたしの会社の同僚の四人で居酒屋にいる。
それぞれだけど会社の人同士を引き合わせのが目的だ。
わたしはフランスのアルルという町で二〜三ヶ月住みたいと思っているが、まだ彼には伝えていない。
「公園にて」
わたしは28歳の主婦で息子を連れて毎日公園に通っている。
ユウジ君のお母さんやコウスケ君のお母さんやフウタ君のお母さんなどがいる。
そこにはコミュニティがあり、顔立ちが整っているお母さん以外は、ゆるやかに疎外されて、やがて公園に来なくなる。
「空港にて」
わたしは離婚して一人で男の子を育てて行くために、風俗で働いている。
そこにサイトウという男が頻繁に通うようになった。
ある時わたしは映画を見た。
それは義肢をアフガニスタンの人にパラシュートで送るという内容だった。そして、自分もそういう事か出来たら良いな、と思った。
その事をサイトウに話すと、それならその仕事をすればいいじゃないか、とサイトウに言われる。
どの話も、これから何かに向けてスタートする所で終わっている。
全て応援したくなるような、希望が持てるような、そんなお話だ。
みんなこれから上手くいくとは限らないけど、踏み出してみるという事をするのだと、そう感じさせられた。
これから新生活に入るひとは、元気になれる本です。読んで不安が減るかも知れません。