山口県光市で起きた母子殺害事件のお話です。
少年法の問題と、被害者家族の権利の問題が、浮き彫りになる事件でした。
当時、テレビや新聞などのメディアでもかなり取り上げられていました。
旦那さんが仕事を終えて家に帰ると、いつもと家の中の様子が違います。
色々探した後、押入れで変わり果てた姿になっているのを発見します。
あまりの衝撃に、旦那さんは硬直してしまいます。この事を、後々まで悔い続けます。
抱きしめてあげられなかった、と。
事件は当時未成年の会社員が起こします。
強姦目的で数件の家を物色し、ついに犯行現場の民家に押し入る。
そこの奥さんに抵抗されたため、首を締めて殺害する。そして死姦に及ぼうとしたところ、一歳に満たない女児が母に向かって泣きながら這ってくるのが邪魔なため、抱え上げてから床に叩きつけて殺害。
そこまでして、ついに死姦を遂げる。
奥さんの死体は押入れに、女児の死体は天井裏に隠して逃走した。
犯人はすぐに警察の手により逮捕された。
しかし、まともな報道はなされなかった。
犯人が未成年だから、その権利を守るため、である。
名前を公表しないばかりか、死姦の事実を伏せて報道するようなケースもあった。これでは、事件の残虐性などが正確に伝わらない。
逆に被害者は、生き残った旦那さんも含めて、赤裸々に名前など全てを報道される。
何のための報道か?
裁判所でも、おかしな事が起きる。
被害者の旦那さんが、被害者の写真を法廷に持ち込もうとしたところ、止められる。
それは認められていない、と。
そんな事で納得させられるはずがない。理由を問うと、裁判官に聞いてくるという。
しばらくのち。
裁判官がダメだと返答したという。
理由の説明は、無い。
その必要すら無いという態度である。
本書は、未成年に対しての司法と報道の異常性を明らかにしている。
極刑を求めてそれが一審、二審で認められず、自らの命を絶つ事さえ考える被害者の旦那さん。
被告側に立つ死刑回避派の弁護士は、ただ死刑廃止のためだけに、荒唐無稽な主値を裁判で展開する。
これほどおかしな事がまかり通っている司法の世界に、恐怖を感じる。
最後は、被告に死刑が言い渡される。
だからといって、全てがすっきりするわけでは、当然ない。
それでも、救われる思いはするような結末だった。
司法に興味が無い人にこそ、読んでいただきたい一冊である。