愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『ガン日記』中野孝次

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兼好法師の『徒然草』や、哲学者セネカの著書などの解説書を書いている、中野孝次氏。

氏が体の変調に気づき、ガン治療のため入院するまでの日記です。

死後、氏の奥さんが遺品整理中に発見したもので、本人が発表するつもりで書いていたのかは、不明です。

 

兼好法師セネカも、死生観についてかなりの考察をしています。

それらの研究をしている著者は、やはり生と死について、かなり考えて自分なりの答えがあるはずです。

しかし、実際には様々な人の意見や思惑に触れて、迷っている様子が見て取れます。

多くの医師も登場しますが、患者さんの気持ちを汲み取り信頼を得ることの難しさが、とても良くわかります。

 

日記の後に、奥様の手で書かれた文章も載っています。

そこでは、著者が心の葛藤を見せずに、淡々としていた様子が綴られています。

 

どう生きるか、どう死ぬか。

ここに、一つの生き方と死に方を見させてもらった思いがします。