緩和ケア医は、一定の期間で亡くなることが決まっている、終末期に差し掛かった患者さんのケアをする医師です。
その仕事をしている医師ならではの視点を期待して、読みました。
この状況になって良かったのは、患者さんが心を開いてくれやすくなったことです。
「私も同じです。一緒に頑張りましょう」
これほど慰められる言葉は、おそらくなかなか無いのではないでしょうか。
著者は医療従事者だからこそ、妙な期待を抱かずに、残された時間を認識出来るはずです。
それでも、自身がチャンピオンケースであって、他よりも長生きすることに期待してしまいます。
著者は、取り立てて特別な事を始めたりしません。
現状に満足しているようにも見えるし、そうでも無いようにも見えるし、自身で葛藤しているようにも見えます。
脳転移しているがんなので、性格や行動が変わる可能性があります。
著者は、それを恐れています。
ある意味、死よりも耐え難い者も知れません。
あまり心の内面描写が出てこないのは、少し期待と違いました。
しかし、あえて淡々と書いているのか、そう振る舞おうとしているのか、考えないようにしているのか。
いずれにしても、多くのことを考えささられる著書です。