弟を保険金詐欺殺人で失った兄の手記です。
犯人は弟の勤めていた会社の社長です。
交通事故に見せかけて殺したため、事件発覚までは、事件だと著者は知りません。
そのため犯人と事故現場に行ったり、お金を貸したりします。
一定の好意を持って接するようになるのです。
殺人事件だと知ってからは、騙されていたことも加わり犯人に大きな憎悪を抱いた事は、想像に難くありません。
それでも様々な変遷があり、拘置所にいる犯人に面会をする事にします。
そしてその時優しい言葉をかけるのです。
この辺は、一般的な人からは考えにくい行動です。
やがて著者は死刑廃止論者となります。
犯人は死刑が確定したにも関わらず、です。
なかなか自分の心情を正確に伝えられないもどかしさのような物が、本書から感じられます。
もしかしたら、著者にも自身の正確な気持ちはわかっていない、もしくは完全な答えは出ていないようにも感じられます。
読後感すっきり!
というものではありませんが、何かを感じて何かを考えさせられる著書だという事は確かです。