今週のお題「遠出」
毎朝歩いていた。
ウォーキングと呼んでも良いか、散歩と呼んでも良いか。
朝起きてすぐ、着替えてから30分ほど近所を周る。
ある時、起き抜けに立ちくらみがした。
と思った瞬間には、後ろに転んで後頭部を強かに床に打ちつけていた。
生まれてこの方感じたことのないほどの痛みだった。
それでも何とか起きられたので、いつも通りに外に出た。
(何か変だな)
そう感じたのは、自分が教会の前に立っているのに気づいた時だった。
どう歩いてきたのかわからないのだ。
まるで自分がその瞬間にそこに現れたような。
もしかしたら、自分はこのまま道に迷ってしまうのではないかという恐怖感。
後で思うとあの時私は、認知症の方の気持ちがありありとわかった。
これは近所に行くのも遠出だと言えるだろう。
まだ老人になるには数十年あるが、よい予行演習になった。
こんな経験は、なかなか出来ないだろう。