
大学生が交通事故に遭って記憶喪失になった。
記憶喪失にも程度や症状が色々あるようで、本書の主人公は、一般的に思われているそれよりも恐らくかなり重い。
家族を忘れたり、知人を忘れる。
それは想像がつくが、さらに忘れていることがかなりある。
電線がわからない。
ご飯がわからない。
満腹がわからない。
文字がわからない。
それじゃ、生活できないじゃないか。
その通りだった。
そんな主人公は哀れに思われることを辛く感じる。
わからない事を聞きすぎて、鬱陶しがられる。
見た目は普通なのも、また厄介だ。
何も知らない子どもが大人になったようなものだろうか。
それでも生きていかなければならない。
だから何とか成長していく。
生きるというのはままならない。
そのことがとても良くわかる。