愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『M』馳星周

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不夜城』や『漂流街』や『虚の王』などの作者である、馳星周氏の著書です。

 

マンションを購入した直後。予定外だった妻の妊娠がわかった。

金銭的な余裕が無くなったことで飲みにも行けず、同僚に付き合いが悪くなったと言われ、思わず殺意を覚える。

出産後は赤ん坊である息子に、妻が寄せているのと同じような愛情は、まったく感じられないでいる。

そんなときに、妻の妹が家に遊びに来る。

若くて魅力的な頃の妻よりも、さらに肉感的な彼女に、道ならぬ欲望を抱く。

折しも、彼女が自分の会社へ派遣してくるという偶然が重なり、自然と接する時間が出てくる。

悶々としているうちに、彼女が淫らなサイトに投稿しているのではないか?そういう行為をしながらこちらに電話をしているのではないか?などという妄想が膨らんで行く。

遂には名乗らずに電話をするなど、ストーカーまがいのことまで始めてしまう。

 

一話目の『目眩』から、濃密で卑猥な世界が繰り広げられる。

『人形』、『声』、最後の四話目『M』まで、息をするのを忘れてしまうほど、スピード感があります。

非日常は、日常のほんの少し先にあるだけ、なのかも知れませんね。