今週のお題「読書感想文」
暴力、騙し合い、女、金、殺し。
ハードボイルドで数多くの作品を出している、馳星周の著書です。
プロ野球の投手だった加倉は、台湾で八百長に加わり、悪霊と呼ばれる殺し屋になり下がる。
ここまでが、『夜光虫』という前作で綴られています。
場所はイタリア・ミラノ。
中華街はここにもあり、そこで「暗手」という呼び名で、加倉は殺し以外何でも請け負っています。
素性がバレると台湾人に殺されるため、顔も変え、名前も経歴も偽っています。
そこに、日本人のサッカー選手を八百長に引き摺り込む、という仕事が舞い込みます。
投手のコントロールと狙撃の照準が似ている、という、とても興味深い記述がありました。
これでいくと、キーパーは良いSPになれるかも?なんていう気がしました。
物語で八百長に引き込まれてしまうのも、ちょうどキーパーです。
主人公は、様々な言語を流暢に話します。
日本語、北京語、イタリア語。必要であれば身につく、とサラッと書いてありましたが、本当にそうなのかも知れません。
何故なら、そうしないと殺されてしまうからです。もし自分が本当に語学だけでなく、何かを身につけようとしたら、それくらいの心構えや環境に身をおこう、と心に決めました。
全てを捨てたような心境でありつつ、必ず生き抜くという行動を取るという、矛盾したようにも見える主人公。
しかし、そこが強さと見ることも出来ます。
割り切る、というか、その場により無駄なことを考えない、というか。
生きたい。
殺されたい。
それでも、いつも躊躇がありません。
死の恐怖を全く感じていないようでもあり、生きる努力を最大限にしているようでもある。
とにかく殺し屋として超優秀な主人公に、少し憧れる気持ちが芽生えました。
がしかし、多くの登場人物が殺されているのを見ると、きっと自分は殺される側なんだろう、と思い当たります。
だから、わたしは黒社会には、入らないでおきます。