愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『暗手』馳星周

今週のお題「読書感想文」

f:id:kazuyoshisan:20200901091420j:image

暴力、騙し合い、女、金、殺し。

ハードボイルドで数多くの作品を出している、馳星周の著書です。

 

プロ野球の投手だった加倉は、台湾で八百長に加わり、悪霊と呼ばれる殺し屋になり下がる。

ここまでが、『夜光虫』という前作で綴られています。

場所はイタリア・ミラノ。

中華街はここにもあり、そこで「暗手」という呼び名で、加倉は殺し以外何でも請け負っています。

素性がバレると台湾人に殺されるため、顔も変え、名前も経歴も偽っています。

そこに、日本人のサッカー選手を八百長に引き摺り込む、という仕事が舞い込みます。

 

投手のコントロールと狙撃の照準が似ている、という、とても興味深い記述がありました。

これでいくと、キーパーは良いSPになれるかも?なんていう気がしました。

物語で八百長に引き込まれてしまうのも、ちょうどキーパーです。

主人公は、様々な言語を流暢に話します。

日本語、北京語、イタリア語。必要であれば身につく、とサラッと書いてありましたが、本当にそうなのかも知れません。

何故なら、そうしないと殺されてしまうからです。もし自分が本当に語学だけでなく、何かを身につけようとしたら、それくらいの心構えや環境に身をおこう、と心に決めました。

全てを捨てたような心境でありつつ、必ず生き抜くという行動を取るという、矛盾したようにも見える主人公。

しかし、そこが強さと見ることも出来ます。

割り切る、というか、その場により無駄なことを考えない、というか。

生きたい。

殺されたい。

それでも、いつも躊躇がありません。

死の恐怖を全く感じていないようでもあり、生きる努力を最大限にしているようでもある。

とにかく殺し屋として超優秀な主人公に、少し憧れる気持ちが芽生えました。

がしかし、多くの登場人物が殺されているのを見ると、きっと自分は殺される側なんだろう、と思い当たります。

だから、わたしは黒社会には、入らないでおきます。