愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『桃尻語訳 枕草子』橋本治

春と言えばガチで曙だわ。 みたいな? 古文が読みにくいのは、現代語と異なるから。 外国語を読むのとそんなに違わないのですよね。 だからそれをそのままに読めるように言語力をつけるか、訳を読むか、二つに一つ。 本書はフランクに訳したもの。 ただし、…

『チャーリーとの旅』ジョン・スタインベック

旅はいいな、と思う。 自分ではいけないから尚更だ。 一人旅なんて、家族がいたら行けない人が大半ではないだろうか。 そこまで行きたいわけでは無いけど。 それでも憧れる気持ちはある。 そして、昔の海外の旅行記と来たら、もうそれを追体験することは決し…

『聖書』

イエスの言行を見ていくと、実に多くのことを聖書から引いていることがわかる。 言行録は新約聖書で、引いているのは旧約聖書から、である。 ある程度聖書を知っていないと、その辺りのことはわからないだろう。 イエスはきっと、敬虔なユダヤ教徒であろうと…

『くもをさがす』西加奈子

がんになった。 そう、人はがんになる。 それは自分かも知れないし、親しい人かも知れない。 今まではあまり近しい人は、なっていなかっただけだ。 また、風邪をひいたり怪我をしたりは自分にもあったが、大病をしてこなかっただけた。 いずれ来るのだろう。…

『後世への最大遺物』内村鑑三

一人ひとりの生き方。 働きにより生み出した成果。 周りの人や他者に与えた恩恵。 それらが、遺産になる。 人は死して名を残すというが、名が残る何かを成し遂げた、ということだろう。 その何かが他者へ、それも直接の相手だけでなく、その先の相手のために…

『晩菊』林芙美子

若い頃に男女の仲になった二人。 それが時を経て再開する。 男は他の女性と結婚すると言い、女に借金を申し出る。 女はもはや老女と思える齢になっている。 楽しそうな会話だが、貸す貸さないお金のやり取りは、紛れもなく戦いである。 お金は恐ろしいと言う…

『硝子戸の中』夏目漱石

優しい人だったんだろうな。 夏目漱石のエッセイには、随所からそういうふうに読み取れる。 昔幼かったころに、母から不安を取り去ってもらったこと。 珍しく1人で家に訪ねてくる女性を、穏やかに励ます会話。 動物に対するフラットな目線。 きっと真っ直ぐ…

おやつと健康

今週のお題「おやつ」 幼稚園生の頃、毎日三時におやつが出ていた。 母の方針によるのだろう、パンの耳のかりんとうや、もち米を揚げた煎餅や、クラッカーにチーズを乗っけたものなど、ちょっと手が混んでいて、おそらく栄養になるようなものだった。 そのお…

『ハイブリッド戦争』廣瀬陽子

現在の戦争は、軍隊が武器を持って攻め込み、攻撃する、という単純なものでは無くなってきている。 ドローンやロボットが戦う。 また、敵対国の電源やネットを切断したり、海底ケーブルを切断したり、人工衛星を攻撃したり。 もはや何でもありの様相を呈して…

『倭国』古市晃

実在が確実にわかっているのは、第十五代応神天皇もしくは仁徳天皇から、だそうだ。 陵墓や記紀の記述を元に、推測していく。 そう、完全な物的な証拠がない過去のことは、推測するしかないのだ。 学術的に解き明かしていく方法に則って考えていくと、恐らく…

『魚にも自分がわかる』寺田正典

知能指数を計ってみたことがあるか? 小学生の頃にやったような気もするが、正確には覚えていない。 チンパンジーは知能が高い。 爬虫類は劣るか。 イルカは知能が高いが、魚類はそうでもない。 何となくそんな認識を持つ人は多いだろう。 しかし、実は熱帯…

『SDGs』蟹江憲史

今となっては利権のために作られた怪しげな目標でしかない。 しかし当初は、真面目に地球を良くしようと考える人もいた。 地球の環境を良くするために考えられた様々な目標がある。 これらを全ての国や地域が真面目に受け取り、実際にそれに向けて努力すれば…

『宗教の本性』佐々木閑

考え方やイデオロギーは宗教である。 かつてこの世に宗教は無い、と言った人がいたことを思い出した。 この二つの意見の本質は同じだろう。 形や物質として存在していないが、それは存在している。 確かに存在する、という言い方は、適切では無いのかも知れ…

『子ども介護者』濱島淑恵

ケアが必要な家族いる、という人は意外に多いそうだ。 施設に入れることが出来れば、まだ良い。 家族でケアをしなければならないような事情を抱えている場合もある。 そんな家庭で両親がケアをできなければ、その役割は必然的に子どもに回ってくる。 こうな…

『在宅医療の真実』小豆畑丈夫

医療費の関係で昔よりも入院しない患者さんが増えている。 その方たちは家で治療を受けながら生活していく。 家族は大変になるかも知れない。 しかし良いことがたくさんある。 家族と患者さんが一緒に生活出来ることで、患者さんの生きる張り合いが出てくる…

『ロボットと人間』石黒浩

人間と遜色ないロボットが作られた。 それは自律的に最適な話題で相手と対話する。 日本語でも英語でも、人との違いがない発音をする。 気分や好感度や関係性で対話のバラエティも豊富である。 こうなると人間とロボットの境界線は曖昧になって来る。 これが…

『証言 沖縄スパイ史』三上智恵

当時の日本は太平洋戦争を戦っていた。 末期には一人十殺などという無謀なことも叫ばれていた。 総力戦となると、普通の人も兵隊となり戦争に駆り出される。 少年も同じ。 むしろ相手を油断させられる分だけ、大人よりも優秀だったのかも知れない。 さらには…

『皇居の歩き方』

昔皇居は京都にあった。 天皇陛下が東京に来てから、実は日が浅い。 千年以上も前から京都には天皇はんがお住まいで、時代によってはほとんど塀もないくらいだったらしい。 時は下り、昔の江戸城が皇居に変わった。 一般の人も歩ける。 周辺は多くの人に人気…

『独裁の世界史』本村凌二』

民主主義は正しいか? 民主政治は正しいか? 全ての人は平等で、等しく一定の権利がある。 だが何も考えていない人と、国の現状と将来をしっかり考えている人とで、全く同じ一票の選挙権で良いのかという疑問はある。 間違いなく優秀な政治家が政治を行えば…

『八九六四 完全版』安田峰俊

天安門広場で中国共産党体制をひっくり返そうという、運動がかつてあった。 十万人の学生や市民が集まったが、軍隊が出動してこれを鎮圧した。 緘口令が敷かれているため実際に何が起きたのかは定かではないが、一万人が殺されたという説がある。 現在中国で…

『文部科学省』青木栄一

三流官庁と呼ばれているんですね。 初めて知りました。 財務省は七万人、法務省は五万人を超える職員を要するが、文科省は最少の二千人そこそこしかいない。 教育は国力の礎だろう。 子どもたちがどんな大人、日本人になるかに直接関わっているのだから。 こ…

『世界を動かすイスラエル』澤畑剛

イスラエルはユダヤ人の国だ。 長年世界に散らばっていたユダヤ人が再結集して建国された。 旧約聖書の時代には、そこはユダヤ人の国であったので、民族の悲願であったと言えるだろう。 さて、ユダヤ教とキリスト教には親和性がある。特にアメリカに多いキリ…

『檻の中の裁判官』瀬木比呂志

裁判官は世間知らずだと聞いていたが、まさかここまでとは。 判決を歪めないために、事件に関係する人たちと知り合いにならないようにする、つまりなるべく知り合いを作らない、などはわかる。 しかし、別の方向でも世間知らずはある。 出世していくと、天下…

『寿命遺伝子』森望

人間の寿命は120歳までと、何かで聞いたことがある。 各臓器の寿命などを考えるとそんなものか、と何となく感じていたのが、本書でさらに腑に落ちた。 細胞分裂のたびに染色体が短くなって行き、ある程度までで分裂が出来なくなる。 それが寿命ということだ…

『記憶喪失になったぼくが見た世界』坪倉優介

大学生が交通事故に遭って記憶喪失になった。 記憶喪失にも程度や症状が色々あるようで、本書の主人公は、一般的に思われているそれよりも恐らくかなり重い。 家族を忘れたり、知人を忘れる。 それは想像がつくが、さらに忘れていることがかなりある。 電線…

『ゼロの焦点』松本清張

結婚直後に相手が失踪してしまったら。 真相を是非とも知りたいとは、みんな思うだろうけど、果たして何が出来るのか。 今ならスマホとSNSを駆使して、もしかしたら真相に近づけるかも知れない。 しかし舞台は昭和。 それでも淡々と謎を解いていく主人公は、…

『緋色の研究』コナン・ドイル

ホームズもしてやられることがあるんですね。 それは事件ではないのですけど。 無能な刑事に手柄を横取りされるなんてね。 それでもワトスンが知っている。 だから我々読者も知ることが出来た、というわけですね。 なんともお互いにありがたいことではないで…

『火宅の人』檀一雄

やりたい事をやっている。 というのが本書の主人公なのだろう。 それにしても、やりたい放題である。 しかしそれは周りにとっては、ではなかろうか。 見ようによっては、本人はひどく辛そうに見える。 どうせこんなものは長くは続かないだろうと思ったら、案…

『二十四の瞳』壷井栄

戦争は日本にあった。 十二人が十年と少しで七人に減る。 それが戦争なのでしょうね。 なりたい職業に就けるだけで、十分幸せなのですよね。 置き屋や奉公に行かなければならないケースもある。 そう考えたら、今を生きている我々は、何を文句を言うことがあ…

『押絵と旅する男』江戸川乱歩

押絵の中に入り込むということがあり得るのか。 このような話になると、いつも果心居士を思い出す。 現実と空想の境目がなくなる奇妙な感覚。 むしろそこに境目なんてないのでは無いか、という気さえしてくる。 謎の老人というのも、現実の世界ではなかなか…