愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『真剣師 小池重明』団鬼六

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真剣師という職業があったというのは知っていました。

賭け将棋を生業とする人たちのことです。

これらの人たちは、昭和の昔に存在していましたが、今はいません。

なぜプロ棋士ではなく、真剣師なのか?

プロとアマの違いは?

将棋のプロになるのは東大に入るより難しいというけど、本当か?

本書を読めば全てわかります。

 

それにしても、主人公の小池重明

あだ名は『新宿の殺し屋』です。

飲む打つ買うの三拍子、どころか、人妻との駆け落ちをする。恩人のお金を盗む。暴力を振るう。二日酔いというか、ほとんど酔った状態で対局に臨む。

とにかくメチャクチャです。自身でも性格破綻者と言いますが、その通りです。

ヤクザになっておけば良かったと後悔する場面が出てきますが、そんな後悔をする人は、まずいません。

それでも人好きのするように振る舞ったり、女性と駆け落ちするほどモテたりと、魅力のある人間だということは否めません。

そして何よりも、その将棋の強さです。

尋常ではありません。

もう少し何かが違えば、日の当たる所で活躍できた、それも歴史に残るような棋士になれたはずです。

そんな所が、われわれ読者にとってダークヒーローのような、奇妙な光を放って見える所以でしょう。