コラムニストの著者が本書を執筆したのは、62歳のときです。
断酒して20年経ったそうです。
サブタイトルにもありますが、元アル中です。
本書のテーマはアルコール依存症。
著者はこのテーマについて考えるのが嫌で、ずっと避けて来たそうです。
これだけの年月が過ぎて、やっと書けるようになり本書が刊行されました。
淡々と書かれていますが、実に壮絶な内容です。ひょっとしたら本人は自覚していないのかも?と思わせるような口調で、それがより恐ろしさを強調します。
アル中になるくらい飲むのに理由は無い。
飲み仲間とは薄い付き合いで外では会わない。
アル中は自分ではそれを認めない。
アルコールに依存する体質があるけど、依存物質があるわけではない。
そう主張するライターがいた。
著者はついに幻覚を聴くようになり、精神科を受診します。
そこでアル中だという診断を受けます。
「あなたはまだ30代だから、困った酔っ払い、くらいでなんとかやっているのだと思う。だけど、40で酒乱、50で人格崩壊、60になるとアルコール性脳萎縮で死にますよ」と言われます。
飲むのをやめてから、音楽や読書や野球観戦がつまらなくなります。そこで、それらの嗜好が酒により書き換えられていたのだと、気づきます。
著者は酒をやめてから、色々なものを失った、という寂しさを持ちます。
立食パーティーは、酒を飲んでいれば何とかなったが、素面で行くとくだらないので、大嫌いになった。
酔っ払いという立場で発言すれば、無茶を言えていた。
毒舌も同じ。
打ち合わせや企画を、酔ったから言いますけど、という発言でキモを決めていた。
「元アル中」コラムニストの告白
というサブタイトルで、アル中で苦しんでいる仲間にとって、お釈迦様の蜘蛛の糸、のようなものになれれば、と本書を執筆したそうです。
そして自身を、断酒中のアルコール依存者、とも言っています。
確かに気をつけて読むと、その通りです。
失ったもの達は、別にお酒が必要なものでは無く、やはりまだ飲みたいのかな?とも取れます。
また、発言や毒舌については依存者のエゴも垣間見えて、お酒の怖さが浮き彫りになります。
注意して読むと、本当に壮絶な内容です。
お酒を飲む人は、必ず得ることがあるはずです。