愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『教誨師』堀川恵子

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教誨師、という仕事があります。

死刑囚を相手に一対一でお話をする、というものです。

誰でもなれるというわけではなく、僧侶や牧師さんなどの、聖職者です。

ただ死を待つだけのために生きている死刑囚を、改心したり心安らかに過ごしたり、何事かを与える仕事です。

本書は僧侶であり教誨師である人物と、その道に引き込んだ師匠のような人の二人が主人公です。

 

死刑囚はほとんどが殺人の罪を犯しています。

しかし、凶悪というよりは、気が小さくておどおどしたような者も多いようです。

人は誰しも、そのような事件を起こしかねないのかも知れません。

 

また、文字を読めない者、境遇があまりにも劣悪な者がいます。

そのようでなければ、犯罪をせずに済んだのかも知れません。

 

僧侶であり、人格者であるはずの主人公も、死刑囚と対峙して話すのは大変です。

時には心ない態度を取ったと反省することもおきます。

アル中に陥ったりもします。

しかしその事を死刑囚に話すと、距離が縮まるという経験もします。

やはり人間と人間、という事なのでしょう。

 

死刑制度に反対か賛成か、という話もありますが、現場を見るととてもなかなか困難です。

教誨師や刑務官に意見を聞くなんて、とてもではないけど出来ないはずです。

 

私は以前からこの仕事を知っていて、興味を持っていました。

余命宣告をされた患者さんと医療従事者の関係に、少し似ている部分もある気がします。 

もともと人はいつか死ぬことは決まっています。

ただ、それが短くて、さらに死ぬ方法まで分かっているのは、なかなか耐えがたいことなのでしょうね。

教誨師は、本当に意義のあるお仕事です。

そして、この仕事は、ボランティアです。