愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『楢山節考』深沢七郎

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1956年に本作品で、第一回中央公論新人賞を受賞した著者は、それを期に作家となります。

民間伝承の姥捨山がテーマの作品です。

 

主人公はおりんという名前の老婆。

通例だと来年中には楢山まいりにいく、つまり山に捨てられにいく年齢です。

なぜそんな掟があるのか?

それは、村がとにかく貧しくて老人を捨てざるを得ないから、そんな掟ができたのだろうと想像できます。

老齢になっても歯が残っているのは、いかにも食べたがりのようで恥ずかしいという価値観。

お金なんて使うことが無いので誰も持っていません。

後家になった3日後には、やもめのところへ同居しに行きます。

それもこれも、食べて生きていくのさえ、ままならないからです。

 

時代なのか、地域なのか。

その村は悲惨に見えるのですが、人々は淡々と生きています。

いや、生きていくしかないのでしょうね。

生きる意味とは?

極限に貧しければ、そんなことも含めて、何も考える余地はできないような気がします。