愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『新世界』西野亮廣 KADOKAWA

 

新世界

新世界

 

 

 

 

はじめに

本書の導入部分がネットうえに公開された時に、かなりの反響があったらしい。

新世界という街で、芸人を始める高校を出たばかりの著者。

漫才コンビを組み人一倍努力して、物凄いスピードで売れていく。しかし売れる早さに実力が追いつかずに、相方が精神的な限界を迎えてしまう。

活動休止の後、今度は丁寧に着実に仕事を増やしていく。

しかし、そこで大物の先輩芸人に、全く勝てそうに無いことに気づく。そして自分が勝てる世界に向けて踏み出すが、最初に待っていたのは、他の芸人や世間からの異常なバッシングだった。

 

著者はお笑いコンビ、キングコング西野亮廣である。有料のオンラインサロンは国内最大級、書いた本はベストセラーになり、様々な本人が面白いと思う仕事をしている。

本書は、お金や信用や仕事などについて書かれている。

本書を読んでいて感じるのは、著者の人間に対する愛情である。そして、一貫してよく考えるという姿勢も見習いたい。また、ある種類の人には嫌われるだろうなぁ、というのもひしひしと伝わってくる。

 

まずはお金とはどういう物か、について述べられている。

お金と信用は同義で、個人の信用が個人のお金になる、そのための装置がポルカクラウドファンディングである。

信用度と認知度が、収益力になる。

 

オンラインサロンの話。

会社では、お金を貰って働く。仕事は自由に選べない場合がある。

オンラインサロンは、お金を払って会員になる。そこで様々な仕事やイベントなどに参加する。これは参加者が自由に選べる。

対価として、やりたい仕事をする経験であったり、仕事の成果を見た人からの信用が得られる。場合によっては、直接報酬を貰う事もある。

 

プレゼントを言葉で送る、レターポットというサービスが紹介される。

これは文字数に応じて、文字がお金として数値化される、というもの。

文章として、お金を相手に送るようなイメージである。

 

お金の正体や、文字や文章についてなど、私が元々興味を持っていた分野について、かなりしっかり書いていてとても興味深かった。

著者の考え方や生き方も、とても魅力的に感じられた。

もちろん全て共感出来る訳では無いが。

そんなに呑みをしなければ、もっと良いのかも知れないな、と少し勿体無く思いました。

『神様に一番近い動物』水野敬也

 

神様に一番近い動物 ~人生を変える7つの物語~

神様に一番近い動物 ~人生を変える7つの物語~

 

 

『夢を叶えるゾウ』や『スパルタ婚活塾』や『ウケる日記』などの著者である水野敬也さんの書いた物語です。

著者は、人を励ましたり夢を与えたりするような作品を一貫して出してくれています。

 

一話目は、童話の『三匹の子豚』をアレンジした物語です。

ワラで家を作った豚の子孫が、知恵を絞りオオカミを撃退して、先祖の雪辱戦に勝利を収める爽快なお話です。

 

二話目は、一万円札の福沢諭吉が現実世界に出てくる物語です。

一万円札を無駄遣いしてしまった主人公が、福沢諭吉との対話を経て、お金について大切なことに気づきます。

 

SFのようなファンタジーのような、人生訓のような、ホッとするような、そんなお話が全部で七話収録されています。

簡単に読めてためになるので、小学生からおすすめ出来ます。

将来、国語の教科書に載ったら面白いな、と思いますが、どうなんでしょうね。

『独学術』白鳥春彦

今週のお題「読書の秋」

 

独学術 (ディスカヴァー携書)

独学術 (ディスカヴァー携書)

 

勉強はとても大事です。

突き詰めれば、勉強は独力でしていく必要があります。

そのため、どのようにそれを行うべきかを知っておくと、とても良いです。

 

自己努力をすることで、勉強が身に付きます。それによって得られる知識よりも、身に付く能力の方が重要です。

 

人の頭はコンピューターよりも優秀です。それは独自に新しく考え、新しい見解や推論を生み出せるからです。

 

色々な物事に興味を持ちましょう。いつから?という疑問を持ち、なぜ?という疑いを持つことから、知識は生まれます。

 

常習的な飲酒はやめましょう。ヨーロッパでは昔からの常識ですが、日本ではあまり知られていません。

 

難しい本を読みましょう。中途半端に、ランダムに、その辺に雑に起きたまに眺める、ペラペラめくる、ぞんざいに扱う、目次を眺める、最初と最後の分を見比べてみる、半分読んだら解説を読んでみる、などがコツです。

常に考えながら読みましょう。

辞書、辞典、地図を備え、分からない場合は、その都度見て理解するように努めましょう。

 

解説本ではなく、オリジナルを読みましょう。

 

教養を身に付けましょう。教養とは知識や知恵を現実の行いに生かすことです。

 

語学学習

外国語は本人の日本語力以上にはなりません。

まずは日本語力をあげましょう。

外国語の全体を俯瞰してみましょう。文法本を2日程度で読みましょう。そして辞書をしっかり読みましょう。

話したり聞いたりすることよりも、文章を読めることが大事です。新聞の評論や論文が理解しやすいのでオススメです。

構文を20から30種類、1日書くと覚えやすいです。

 

どんな人、どんな考え方も理解しようと努めましょう。これは本に対しても同じことが言えます。

知識は普遍的で人類の宝です。

 

聖書、コーランハディース、スッタニパータ、ブッダの言葉、正法眼蔵などは、読んでおきましょう。

外国の本を読んだり人を理解するのには、ベースにある宗教を知っている必要があります。

 

 

本書は独学のテクニックを書いているわけではなく、その必要性や根本的な考え方について書かれています。

まずはそういった本質が、とても重要なんだと言うことです。

これを読んでから勉強すると、知識や教養が本物になりやすいはずです。

何かを学ぼうとする人全てにおすすめしたい本です。

『よくばり世界一周!』東條さち子

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世界一周をしてみたい、と思っている人は多いのではないでしょうか。

著者もその様に思いながらできずにいた、と言う人の1人でした。

小学生の娘さんが1人、旦那さんが1人います。

旦那さんは失業中、著者は漫画家さんです。

著者は世界一周する時間を作るために、半年分の原稿を書きためます。これで、半年間仕事を休めるという事です。

半年分仕事を先取りしてしまうというのもなかなかできることではありません。

その行動力に脱帽です。

やってやれない事は無いのですね。

 

著者は世界一周航空券、と言うチケットを入手します。いくつか種類があって値段が30から50万円です。

保険にも入ります。アフリカや南米にも行くので、検疫センターに相談して7回予防接種を受けます。

その他にユーレイルパスと言う、ヨーロッパほぼ全域列車に乗れるパスなども準備します。

出発前に合わせて約850,000円の出費になります。

 

まずはインドに行きます。駅では多くの人が寝転がったりしていて足の踏み場もない様子です。

線路には糞便がまき散らされていて、著者が見ている目の前で、おじいさんが立ちションを始めます。

街を歩いていても、安宿でも、しつこく話しかけられます。

 

イスラム圏でも、触られたり声をかけられたりが、かなり出て来ます。

ひょっとしたら、これらの国では服装や態度には、特別気をつける必要があるのかも知れませんね。

 

素敵なツーリストとの出会いもあり、友人を失う出来事もあり、やはり盛りだくさんな内容です。

世界一周を夢に持つ人は多いかと思います。

コースや寄る国や季節や期間で、様々なパターンがあります。

 その内の一つのモデルとして、とても興味深い作品です。

海外旅行に興味がある人は、読んでおいても良いかも知れません。

『空港にて』村上龍 文春文庫

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2005年出版、著者の村上龍が自身で「最高の短編を書いた」という「空港にて」の他、全8編が収録された短編集。

 

「コンビニにて」

主人公のぼくは、サンディエゴの映画技術学校に行くと決めて、自分ですべて手続きを終えた。

そのぼくがコンビニに入って、そこにいる人物をそれぞれ描写していく。

大学を中退して、スナックでバーテンとして働き始めた兄との会話などを通じて、ぼくの未来を想像させられる。

 

「居酒屋にて」

わたしは、自身の彼とその会社の人と、わたしの会社の同僚の四人で居酒屋にいる。

それぞれだけど会社の人同士を引き合わせのが目的だ。

わたしはフランスのアルルという町で二〜三ヶ月住みたいと思っているが、まだ彼には伝えていない。

 

「公園にて」

わたしは28歳の主婦で息子を連れて毎日公園に通っている。

ユウジ君のお母さんやコウスケ君のお母さんやフウタ君のお母さんなどがいる。

そこにはコミュニティがあり、顔立ちが整っているお母さん以外は、ゆるやかに疎外されて、やがて公園に来なくなる。

 

「空港にて」

わたしは離婚して一人で男の子を育てて行くために、風俗で働いている。

そこにサイトウという男が頻繁に通うようになった。

ある時わたしは映画を見た。

それは義肢をアフガニスタンの人にパラシュートで送るという内容だった。そして、自分もそういう事か出来たら良いな、と思った。

その事をサイトウに話すと、それならその仕事をすればいいじゃないか、とサイトウに言われる。

 

どの話も、これから何かに向けてスタートする所で終わっている。

全て応援したくなるような、希望が持てるような、そんなお話だ。

みんなこれから上手くいくとは限らないけど、踏み出してみるという事をするのだと、そう感じさせられた。

 

これから新生活に入るひとは、元気になれる本です。読んで不安が減るかも知れません。

『新しい道徳』北野武

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道徳にたいしての、著者の考えを述べています。

はじめに、著者は本書の内容はあくまでも自身の考えで、他人に押しつけるつもりは無い、と書いています。

そして「道徳がどうのこうのという人間は、信用しちゃいけない」と結んで、半端が始まります。

 

道徳教育の良くない点は、様々な価値観を認めていないところにあります。

ある特定の考え方を良いこととして、これが道徳です、と決めつけている節があります。

 

道徳の教科書では、良いことをするための理由は、気持ちいいから、とされています。

マナーや美意識で行うべき行為に、気持ちいいから、という理由をつけるのはいかにも嘘くさい。

 

大人が戦争をしているのに、子どもにケンカをするなと言う。

 

なぜ本を読みながら歩いていた二宮金次郎銅像になり、スマホ歩きは目の敵にされるのか。

 

今の世の中では、ウサギは途中で昼寝しない。

他のウサギと競争中で、カメにかまっている暇はない。

 

いつの時代も、どんな人間にとっても通用する絶対的道徳はない。

 

私たちが行動する指針は、それぞれの正義であったり宗教であったり美意識であったり本能的なものであったり、そして本書に出てくる道徳である。

これらから、自分がなすべきことを選んで、行動します。

つまり、自分で考えることが非常に重要だと言えます。

日本人は宗教を持っていない場合が多いので、道徳は必要です。

そしてそれが、正しく使われなければいけません。

 

本書は、あまり考えない人が読むと、考えるきっかけになってくれるかも知れません。

 

 

 

『死ぬこと以外かすり傷』幻冬舎編集者 箕輪厚介

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本の編集者をしている著者。

トップの起業家である人たちと、本を作るということやそれ以外にも様々なビジネスをしている。

 

編集の仕事は最強である。

物凄いレベルの変人や天才たちと毎日のように会い、本を作る事で成長できるからだ。

二つ目は、ストーリーを作る仕事だからだ。商品にストーリーを作る編集者の能力で、様々なプロダクトのプロデュース力がつく。

三つ目は、人の感情に対する嗅覚を磨けるからだ。売れる本を作るために必要で、やはりあらゆるサービスやプロダクトを作る上で重要になる。

 

サラリーマンも最強の仕事だ。

会社の金とインフラを使ってビッグプロジェクトにフルスイング出来るからだ。

もちろん失敗しても、自分が損をする事は無い。

 

職場で無駄だと思う仕事を振られたら、無駄だとはっきり言おう。その方が職場のためでもある。

 

意識高い系と人を揶揄するよりも、自分が意識を高く持とう。

 

スマホは持ち主によって、全く別の物になる。

ゲーム好きにはゲームを、ゴシップ好きにはゴシップを差し出す。

バカはますますバカになる。

 

自分に何万円の値札を貼るか?

 

夢中になって自分のやりたい事をやる。周囲の常識的な評価を気にせず、情報をたくさん取り込み、楽しんみながら、無理をする。

 

ここまでして努力すれば、間違いなく何かを成し遂げることが出来る気がします。

こんな生き方、仕事の仕方であれば、過労死やストレスとは無縁に生きられるはずです。

本書は、疑問を持ちながら働いている人に、ぜひ読んでいただきたいです。