愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『むかし日本人 いま台灣人』梅桜交友会代表

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戦時中、台灣は日本の領土でした。

朝鮮や中国の一部も、やはり日本が占領していました。

本書は、その当時台灣で生まれた台灣人の皆さんに、対談形式でインタビューをしたものです。 

 

当時の台灣人たちは、日本人として日本語を学びました。

学校などの様々な施設を建立し、制度を整え、本気でそこを良くしよう、と奮闘していた日本人と台灣人の姿が浮かんで来ます。

当然、戦争は良くないのですけどね。

 

同じようなことを朝鮮や中国でもしたはずなのですが、各国民の日本への感情には、かなり差がありますよね。

本書に出てきた人のように、純粋に当時を知る人のお話は、とても貴重です。

しかし、高齢になりどんどんその数が減っているのが、とても残念です。

『2分間ミステリ』

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約二ページの中に収まる殺人事件。

それを毎回博士が解いていく、クイズ形式のミステリーです。

鮮やかなトリックもあり、言葉のあやを見つけるものもあり、状況をよく見たら解決出来るものもあり。

注意深く読めば、大抵は正解に辿りつけるはず。

なのですが、これがなかなか…。

純粋に楽しめる著書です。

『仕事に効く教養としての世界史』出口治明

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世界という広い横軸と、歴史という長い縦軸を掛け合わせると、ほとんど全てのことがわかる。

と言ったら言い過ぎでしょうか?

ともあれ、知っておくと良いのは確かですよね。

 

日本では奈良時代古事記日本書紀点が書かれた。唐に対して、自分たちも歴史のある立派な国だよ、と言うためである。

 

漢字は文字数に対して情報量が多い

 

前王朝最後の王は、全部悪く言われる

これは悪政だから王朝が変わった、と言うロジック

 

ドメスティケーション、農耕、安住化により神が生まれた

 

宗教は、貧者にとって阿片のようなもの

 

長者の万燈より貧者の一燈

 

ブッダの教えはインテリが対象だった。

廻天昇から涅槃に至る道

 

ゾロアスター教バラモン教比叡山延暦寺、これらには火を大事にするという、共通点がある

 

交易には2種類がある

1、相互に利益がある一般的なもの

2、威信交易・すごい貢物を渡し、マウンティング

 

始皇帝による文書行政・中央から全土に指令を出す

現在の共産党政権も同じことをしている

 

共産主義(建前)の裏は、需給(本音)

高度成長を信奉し、お金儲けが好き

 

キリスト教5大本山と5大総主教区

コンスタンティノープル教会

アンティオキア教会・シリア

エルサレム教会

アレクサンドリア教会・エジプト

ローマ教会

 

三位一体説・神、精霊、イエスは1つ

ローマ教会・ドイツとイングランドを失った。そこでアメリカやアジアを得ようとした

100年戦争を経てフランスとイングランドは別の国になった

 

バイキング・北欧から来た大柄な人々。

フランスからノルマンディーをもらい、イングランド南イタリアアイスランドサンクトペテルブルグキエフ、ロシア、シチリアへ広がっていった

 

すべての動植物は移動し、混じり合っている

 

どこの人も、故郷や祖先をすばらしいと思っている

 

アメリカは特殊。歴史、伝統がない→理性、憲法ベースで考えるしかできない

 

真の保守とはうまくいっていることを変えず、まずいことが起きたら変える、という方法

 

日本の高度成長は歴史や地理で見てとても稀な状況。とてもついていたと考える。

 

著者は世界史を身につけることにより、へこたれないビジネスパーソンになって欲しいと言います。

世界は、歴史は、様々な考えや出来事があり、それを知るとある種の諦觀が生まれます。

そこで楽に挫けず頑張れるようになれらば。

それが著者の願いなのかも知れませんね。

『哲学・宗教の授業』佐藤優

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著者が実際に大学で行った授業と同じ内容を、著書にしたものです。

 

ワラパルテの原則・何人かの専門家でネットワークを作れば権力は簡単に取れる

 

哲学は(悟性) (理性) (感性)など、得体の知れない言葉が出るので難解である

ドイツ語ではこれらが日常語として使われるため、ドイツ語圏の人は哲学を理解しやすい

 

クリティーク・吟味、検討

相手の論を踏まえて、自分の見解を付加していく。議論にはこれがとっても重要

 

虹の解釈も国によって異なる

中国では天が地上に怒っていると言う不吉な証

旧約聖書では、ノアに対してもう洪水を起こさないと言う、神様からの証

 

日本人にとっては関ヶ原は超重要、しかし他国人にとっては、あまり意味がない

 

ナチズム・アーリア人は優秀。それを増やそう

ファシズム・その国のためにみんなで頑張ろう。外国からは収奪しよう

 

民族問題・合理性や人権からの解明は不可能。神話、記憶、象徴などの非合理な内在論理の解明が不可欠

 

ナショナリズムには指導者がいない。動きだしたら止められない

 

物神崇拝・人の作った神話に、人が囚われてしまうこと。貨幣、AKBなど。

 

過剰に信頼してみるとその閾値が強く広くなる

不安だけど任せてみよう

嘘をついているみたいだけど許そう

 

バチカン・200から300年スパンで世界戦略を練る

1、対話でイスラム穏健派を味方にして、過激派と戦わせる

2、対話で中国も内側から崩す

 

イスラム

シーア派1割

スンナ派9割

 ハナフィー学派

 マーリキー学派

 シャフィト学派

 ハンバリ学派・過激派多い、世界は一つのカリフ国家たるべきと考えている

 

サウジアラビアではハンバリ学派の1つワッハーブ派が国教。

しかし、ウイスキーはぶどう酒からできていないから飲んでも良い。

買春も短時間結婚だから問題ないとみなす、等教義が乱れている

 

アルカイダ・グローバルジハード論。組織を作らず2〜3人でテロを世界各地で起こす。このため足がつきにくい。

ISも緩やかなネットワークのため根絶が困難。

 

アラブ社会では、神権。人権の反対語。

 

類比・関係ない物を並べて類似性を見出すこと

神と父など。

 

様々な事を知っておくと、様々に考えることが出来ます。

気持ちも楽になるかも知れません。

そして、相手を知るにはそのバックグラウンドを知っておくとよいのは、確かです。

本書を読むと、世界がかわる人がいる気がします。

 

『共産党宣言』マルクス・エンゲルス

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現代で共産党社会主義は、なかなか難しいところがある、と露呈してはいます。

しかし、この資本主義の経済が完璧に上手くいっているかというと、そうではありません。

そこで、何か得ることがあれば、と本書を手にとりました。

 

今までのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である

 

闘争はいつも全社会の革命的改造をもって終わるか、相戦う階級の共倒れを持って終わった

 

ブルジョワ階級・資本家、雇用者

プロレタリア階級・労働者、自らの労働を売る

 

ブルジョワ階級は全ての職業から、尊敬や信心をはぎ取った。医者、法律家、僧侶、詩人、学者など。

 

労働者は自分を切り売りする点で、1つの商品である

 

共産主義者の理論は、私有財産の廃止、に要約できる

他人の労働を自分に隷属させる権利を奪う

 

1個人が他の個人から搾取することを廃止

1国が他の国から搾取することを廃止

階級の対立が消滅すれば、国民相互の対立も消滅する

 

こうして見ると、とても理想的には見えます。

しかし、ソ連東ドイツや中国などを見ると。

人のやることには、完璧はないのかも知れませんね。

 

『獄中記』佐藤優

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外務省で外交官として、国益のために職務にあたっていた著者。

それがある時逮捕され、留置所に入れられてしまいます。

その1年以上に及ぶ獄中で書き溜めたものを、書籍化したものが、本書です。

 

江戸時代は本がとても大切なものだった。

声に出すことを読むと、黙読は見る、と呼んでいた。

 

外界と遮断された状況は、知的営為が深くなる

 

学習に最も重要なものは動機である

 

語学に必要なのは、文法と単語

 

チェチェンの(血の掟)

自己の7代までの名前、出生地、死亡地、死亡理由、墓の場所などを暗唱する

もし先祖が殺されたら、犯人を特定し、敵の男系7代の子孫に対して復讐する

 

ペストを媒介するネズミを駆除する猫が、悪魔の手先、として大量に殺されたことがある

 

縁起感

すべての出来事は原因と結果からなる

今おかしなことをすると、将来そのツケが来る

 

キリストは神の子だが、死刑囚への道を自覚的に選んでいった。

我々も常に困難を選んでいくべきだ。

 

国家の本質は同じ。特定人物をターゲットにすると、その人は逃れられない

 

ラテン語サンスクリット語は文法的に近い

 

唯識思想

人間の過去の行動や言動は忘れていても深層に残り、影響も残る

深層を引き出すとき、自分に都合が良いように変えてしまう

言語を組み立て変えると、同じ物事が別のことに見える

 

神やキリスト教に言及せずとも、真理は言い表すことができる

 

独房で暮らすと、死刑囚の気持ちがわかり、時間の大切さもわかる

 

独房で監獄について学ぶと言うのは、普通の学者にはできない特権だと考える

 

友を救えなくても見届けるのは勇気

 

生き残るには知恵が全て

キリスト教・最悪の時が過ぎた。そこにイエスが現れた

ユダヤ教・これからいくらでも、悲惨や理不尽なことは起きうる

 

歴史や政治の英雄見るときは、下人根性で見てはならない。常に高い理想を保ってみる。

 

外なら3 、4年かかる勉強を、獄中では400日で行うことができた

 

政治犯や宗教犯は常に矯正不可能

 

他者に全く理解されない文章は(インクのしみ)に過ぎない

 

ヘーゲル論文

1、歴史は現在起きていることの意味は誰にもわからない。終わってから、優れた哲学者が解明できる

2、歴史を作れるのは偉人、必ず政治家である

 

獄中て2〜3ヶ月すると聴覚と触覚が上がる

 

得るものが多くて、とても書ききれません。

ともすると獄中が羨ましくさえなりますが、集中力があれば良い話なので、捕まらない方が良いのは確かです。

『ポーカーフェイス』沢木耕太郎

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深夜特急』などの著者である、沢木耕太郎氏のエッセイ集です。

一話目から、初体験、のエピソードです。

と言っても、そのような意味では無く、文字通り初めて体験した何か、というものです。

文章に人を引き込むような力があります。

一人でどこへでも行き、よく歩く著者には、興味深い人との出会いや出来事が、たくさんあります。

外食や外出をやや控えたい今の時期には、うってつけの著書です。