愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『止まった時計』松本麗華

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オウム真理教の教祖である、麻原彰晃の三女の手記です。

表紙の写真を見たら、父とそっくりだな、とある世代以上の人は思うはずです。

 

著者は、アーチャリー、という別名で教団内で生活します。

小学校には通わず、教徒たちに勉強を教わりつつ育ちます。

教団内での宗教的地位はかなり上の方です。

しかし信徒から特別に尊敬されている様子はなく、教祖の子どもだから高い地位にいることを、見透かされているように見えます。

記述を見る限りでも、宗教的な教育を十分にしてもらっているようでもありません。

 

麻原彰晃は、教祖でもあり父でもあるのですが、著者にとってはただただ父親なんだろうな、と感じさせます。

教祖に対して、教団に対して、宗教に対して。

特殊な家庭に生まれ特殊な環境で育ちました。

一般的な人格や思考などを形成するのは、とても困難だと言えます。

著者なりに考えて行動してきたのでしょう。

自傷行為なども繰り返して。

 

一般的な家庭に生まれていたら。

せめて一般的な宗教家のもとで教育を受けられていたら。

きっと違った人生になっていたはずです。

本当に著者が不憫でなりません。