愛すべき本たちの備忘録。たまにかたい本も。

様々な書評です。参考にして頂けると幸いです。

『黒猫 モルグ街の殺人事件』ポオ 中野好夫

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殺人事件を扱う短編推理小説集。

よくある謎解きのようなストーリーでは無い。

人を殺すとき、捜査を受けるとき、犯罪者は極度の緊張感にさらされるだろう。

それはそうだ。

人を殺しているのだから。

発覚したら捕まってどのような目に遭うか。

被害者家族に恨まれて報復を受ける可能性もある。また、人によっては被害者の怨念に悩まされてもおかしくは無い。

そんな心理が伝わるから、こちらもじっとりと手に汗を握る。

こんなになるんなら、自分が人を殺すようなことはすまい、そう決心しながら。

『モモ』ミヒャエル・エンデ

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聞き上手の女の子

実は会話で聞き上手というのは、なかなか難しいのでさないか

人は通常、自分が話して相手に聞いて欲しがる

 

お金と時間は互換性があるように扱われている、現代の社会ではという話だが

本来はそんなはずはない

 

生きるのに大切なものは何か?

もしかしたら子どもの方が分かっていて、大人は忘れてしまうのかも知れない

『侍女の物語 誓願』アトウッド

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何が気に入らないんだろう?

差別、権利、平等などに関して訴える人たちに、そう感じることがある

つい最近もガラスの天井という言葉があった

確かに性別などで、やりにくいことはあるだろう

ただ、それを無くすのが常に正しいことなのだろうか?

身長をそろえてバスケをする

左利きも用のコイン投入口も備える

入試は全員合格にする

全く同じ人間は存在しない

違いを認めて尊重するのって、ジェンダートイレを設置するような方向が本当に合っているのだろうか?

本書は、女性差別に抗うために、架空の都市を作り上げて描かれている

そこまでか?という気がしてしまう

どうなったら満足なのだろう?

しかし

しかし、わたし自身の環境と著者の環境は違う

受けた教育も、文化も、暮らしている社会も

もし著者のように感じる人が多いのであれば、その社会はあまり良くないのだろう

『池袋ウエストゲートパーク男女最終戦争』石田衣良

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女性の容姿を傷つけるために酸を顔目掛けてかける、という行為がある

アシッドアタックというそうだ

名前がつくくらいだから、世界も含めると相当数行われているらしい

昔広島で原爆により顔半分に火傷を負った女性の話を思い出した

明確な悪意を持ち、ただ相手に害をなす

自分に得られるものは何もない

こんなことで溜飲を下げる人間がいる

そんな行為がある

『脳が壊れた』鈴木大介

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脳も体の組織の一つに過ぎない

だから傷害はあり得るし、機能不全もある

しかし五感の情報を統合したり、無意識の生命活動を維持したり、その働きは多岐にわたる

もしかしたら、その生命体の殆ど全てだと言ってよい

逆説的かも知れないが、だからこそ脳に頼ってはいけない

信用し過ぎてもいけない

脳は間違える

脳は捏造する

それがわかったら、世の中がさらにわかるようになる

『弁天小僧』

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思っていたより若い

当時のメイク技術がどれほどだったかは分からない

意外にかなりの白塗りだから、今より化けやすかったかもしれない

それにしても、バレたら危険な犯罪をするために女装までするものだろうか?

色気たっぷりというよりも、若い娘さん、という風情だったのだろう

生きるためには何でもしなければならなかったという見かたも出来る

親を持たずに子どもが生きるのは大変だっただろう

しかしそこに悲壮感はなく、独立した一人の人間がいて、カラッとした明るさがある

そして、華もある

『ひとり暮らし』谷川俊太郎

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詩人の頭の中はどうなっているのだろう?

わたし自身は詩を書くようなことはないので、とても興味を持っている

谷川俊太郎氏は、絵本も書いている

「そうか」

と思う

詩は子どもに語りかけるのと似ているところがあるのか、と

そんな事を思いながらこの文章を書いていて、くしゃみが一つ出た