口数の少ない、しかし、腕は確かな医師勝呂。
戦時中の雰囲気がありありと残る時代にあっても、その人物は特徴的です。
腕は確かだけど、温かい治療を受けているのではなく、冷たい感触を患者は持ちます。
そんな彼には、重大な過去がありました。
それは大学病院に在籍していた当時、敵国の捕虜の人体実験に立ちあった、というものです。
実験後は亡くなってしまうので、殺人と言い方を変えても良いかもしれません。
実験に突き進むまでの、大学内で出世争いの様子。
参加した各人の背景や心情。
神はいるのか?と、その中の一人が問います。
戦時中という、人の命が軽んじられる状況だったことは、確かです。
それでも、人を殺めて良いことにはなりません。
それが、ただ殺すだけではなく、医学の進歩に多少なりとも寄与するところがあったとしても、です。
しかし、本当にそうなのか?
そもそも参加者は、そこまで考えていたのか?
生と死について。
自分の考え方や生き方について。
戦争について。
様々なことがテーマになり得る作品です。
ただ言えるのは、ある人には、殺人は耐え難いかも知れない。
またある人は、人の死を感じることさえ出来ないかもしれない、ということです。