認知症になった父親をもった一人息子の手記です。
本人は実家から離れて、弁護士事務所を開いています。
ある時、事務所に父親から不審な電話が入ります。
これを著者は、一人っ子の自分に対して、父親がストーカー化したことを疑います。
しかし現実はそうではありませんでした。
認知症です。
その内に話が理解出来なくなり、病院に行って診断されます。
買い物で、お金を払うのが分からなくなり、万引きで捕まります。
母親の日記が、途中に挿入されます。
ワガママに振る舞われたり、手が出るようになったり、壮絶な様子が見てとれます。
とても在宅でお世話をするのは困難になり、入院することになります。
認知症は、診断されてからの平均寿命が10年も無い、難病です。
この父親も肺炎になり、やがて最後の時がきます。
認知症になってからの家族にとって辛い日々の中で、父親の「ありがとう」という言葉により、著者は救われます。
病気の重さにもよるのでしょうけど、元来持っているその人の良さが、光る場合があるのかも知れませんね。